シクラメン礼賛

かれこれ10年以上、お客様から暮れにシクラメンの鉢植えをいただいている。冬に向かい、彩りが少なく、寂しい思いをすることが多い昨今、非常に元気付けられる。今回は、先のお客様からは、別のものをいただき、他二人のお客様からは、それぞれ真紅・ピンクと白のまだらになった鉢植を送っていただいたが、勢いが良く、楽しくなる。しかし、よく見ると俯き加減で控えめなのである。因みに花言葉は、「内気」だそうだ。適度な水遣りと剪定をすれば、中に潜っている蕾が次々に咲き、長いこと楽しめる。

シクラメンと言えば、自分が何十年も慣れ親しんできた、1975年リリースされた小椋佳さんの作詞作曲、布施明さんが唄った「シクラメンのかほり」がある。自分は、歌詞になったり、小説で表現される様な、目眩く恋など無縁であったが、追体験を想うことは、悪くない。真綿色した、うす紅色の、うす紫のシクラメンに模して、恋の予感は羨ましく、恋の成就は妬ましく、恋の終わりは同感を禁じ得ない。清(すが)しく、まぶしく、淋しい「シクラメンのかほり」は、小椋夫人の「佳穂里」さんのことを示唆しているのだろう。因みに「シクラメンの芳しい香り」を感じたことはないが、三色の色で讃えた隠喩を以て、洒落た詞を聞く度に感動する。布施さんの歌唱力と相まって、この歌詞、楽曲、歌唱の三位一体で「シクラメンのかほり」が人々の脳裏に永遠の名曲として生き続けるのだと思う。

人様から教えられて、好きになった花もあるが、自ら出逢った花も多少はある。「こぶし」「鈴蘭」「ヤシオツツジ」「(春)蘭」「泰山木」「アカシア」「くちなし」「鉄線」「(一重の真紅のつる)薔薇」「ライラック」「立葵」「木槿」「浜茄子」「百合」「秋桜」「山茶花」「椿」等々。これまでは、ただ綺麗、可憐、健気な感じ、毅然とした姿等好みに合う花に過ぎなかったが、次に垣間見た時には、近寄って、しばし過ごしたい。詞の一つでも浮かんでくれば、楽しい出逢いになり、生き甲斐になるのかも知れない。

この記事を書いた人
伊藤武

斎藤清の出生地、会津で斎藤清版画ギャラリー「イトー美術」を運営している、いとたけ こと伊藤武です。
http://itobi.sakura.ne.jp/

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