早く同窓会をしたい!?

友人がいないし、所属するGROUPもなく、人間的な繋がりの少ない自分が、唯一、心置きなく時間を忘れ、話せるのが二つ違いの兄、八つ違いの姉である。それぞれ80歳、86歳になる。自分の少年時代、兄は、感動した映画を見る度に,あらすじを淡々と喋るのではなく、順序よく、簡潔に、楽しげに、所作を交えながらCLIMAXも考え、DRAMATICに話してくれた。まさに弁士と一観客と言うべき贅沢な時間を過ごし、兄には畏敬の念さえ抱くと同時に、自分の不甲斐無さと遣る瀬無さを痛感させられていた。兄が高校2年の時結核で入院し、福岡での転地療養生活を送り、接点も少なくなった。当時、業病で病気がうつると言われていたせいもあり、母親がなるべく接触をさせなかったし、自分の黒歴史のせいで、兄の事を慮る余裕がなかった。その後も自分は大学に進み、仕事も順調に見えたのであろう。一方兄は、高校中退しCAREERを失い、その後、胃腸病にも苦しみ、仕事にも恵まれず現在に至っている。兄にとっては、情の薄い弟は、妬ましい存在だったかもしれない。立て板に水のごとく喋り、年の離れた姉には、ついて行けず、ただ黙然としていた記憶しかない。

母親が2005年に亡くなり、その後2015年に長兄を失い、転機が訪れた。長兄とは不仲が続いていたが、亡くなる少し前には、狭量な自分を反省し、穏やかな時間を持てたが、後悔しきりであった。生前、母親との確執は亡くなる迄約20年続いたが、輝いていた時の母親像を懐かしみ、長兄の死をきっかけに、姉・兄と語りたくなった。これまで、現実的な事以外話すこともなく、親しい交流もなかったのに、ここ3〜4年は、時々会って話をした。母親、長兄への想い、身辺の事、興味の対象、世間話、世界の動向、政治情勢等、意外と接点があり、熱く語りあった。

最近は、あまり会えず、お互いに超高齢に近づいているので焦っている。法事の時に会うのでは、遅きに失する事になる。まだ十分の1くらいしか話せていないし、失われた時間を取り戻したい。最早、カッコつけることは、何もない。今になったら、唯一の同窓会仲間気分で話せるのだ。来年は、時間を調整し、近場の温泉旅館に二日ほど泊まり、積年の心の隙間を埋められたら、ありがたいと思う。お互いに、ある程度、話す内容がわかっているが、再び確認する事、少しでも新たな話も出来たら嬉しい。回顧するだけでなく、そこから何かが生まれるかもしれない。

この記事を書いた人
伊藤武

斎藤清の出生地、会津で斎藤清版画ギャラリー「イトー美術」を運営している、いとたけ こと伊藤武です。
http://itobi.sakura.ne.jp/

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