歌心と歌唱力があり、演じきられた歌は、いつでも蘇る。

遠くに出張に行く度、長い運転時間を持て余していたが、今回は、年輩の歌手4人のALBUMを聴いてみた。「かぐや姫」の、南こうせつの歌唱力は相変わらずで、その色っぽい歌声には癒される。伊勢正三の「なごり雪」は、せつない想いを抑え気味に淡々と歌っており、情景も浮かんでくる。シンガーソングライターの強味が十二分に発揮されていた。

圧巻は、ちあきなおみの声音であった。以前から、歌唱力が抜群なのは、知っていた。持ち歌は、「喝采」が広く知られており、最初聴いたた時は、耳を疑った。内容がDRAMATICで、実体験でもないのに、その歌の力が、いっぺんのDRAMAを思い起こさせ、余韻さえ感じられた。以来注目していたが、持ち歌が少なく、わからないまま、今回、COVER曲等も聴いてみて、改めて、彼女が、伝説の歌姫であると、実感した。「矢切の渡し」「夜霧よ今夜もありがとう」「アカシアの雨がやむとき」等、持ち歌の歌手と比べても見劣りしないし、むしろ、歌の良さを引き出していた。「花と蝶」は別の歌に聞こえるほど、濃密かつ、すっきりしていた。だいたい、歌詞、楽曲が優れ、そこそこ上手い歌い手が、作り手側の意図も理解し、最高のPERFORMANCEで応えた場合、HIT曲が産まれることが多い。彼女の歌ったCOVER曲でも、声量豊かな艶のある声で楽曲と 歌詞とをFITさせ、情景、情況が浮かんでくる歌力は、他の追随を許さないと思う。演歌でも泥臭くなく、こぶしを回すなどのTECHNIQUEを弄さず、GEARを無理なく切り替えている。単に怨歌、嘆き節の失恋歌にならず、恋の成就、破綻を超えたところで、昇華した美しい詩歌を聞かされているような気がする。天賦の才能と努力の賜物で、体で覚えこんだ歌が始まると、自然にSWITCHが入り彼女しか知らない歌の世界に導入してくれるのだ。面目躍如で、正に演歌の女王とも言える。

1947年生まれで、若い頃から家族のために、唄うことを生業としていた彼女が苦労の末、HIT曲「雨の慕情」を出し、人気歌手になり、1978年俳優、郷鍈治さんと幸せな結婚をすると同時に、充電期間に入り、仕事量を減らしていたが、1992年夫と死別する。その時、「もう歌わなくていいよ」と遺言されたそうだ。最愛のPARTNERを失った後、実質、引退したようなもので、冥福を祈り、静かに暮らしてるらしい。多くのFANが再登場を期待して久しいが、もう十分にめくるめく命を燃焼させたのではないだろうか。こんなにたくさん、素晴らしい作品を残して貰い、ありがたいし、彼女のJAZZ、CHANSONも聞き、女優、MUSICAL女優としての映像をも見たいと思っている。この先、世間に身を晒すことなく、己のPARFORMANCEに忠実に生きてもらうことを願っている。

この記事を書いた人
伊藤武

斎藤清の出生地、会津で斎藤清版画ギャラリー「イトー美術」を運営している、いとたけ こと伊藤武です。
http://itobi.sakura.ne.jp/

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