三倍速話法で、世の中が一変して見えたが…

三年半以上前、風邪をひき、肺炎から心不全を引き起こし、救急車で病院に運び込まれた。半年程入退院を繰り返し、命を拾っていただき、現代医療には感謝している。心臓病の患者さんから「  今日元気でも、明日、突然倒れるのが心臓病だから、薬は、飲み続けた方がいいよ 」と言われ、不安になり、一時は20錠ほど、飲み続けていた。しかしここ一年半、一錠も飲んでいない。僅かな数値の高低を気にしていたら、永久に薬離れができないからである。一応、食べ物等に気をつけており、異変があったら、病院に駆け込むつもりである。しかし当時、わが身に興ったことが、その後の生き方や意識も変えたと思っている。

今考えると、当時、確かに別の異変が起きていたのかなと思われる。入院している時から、異常にTENSIONが上がり、早口になり頭の回転が良くなったような気がしていた。18歳の時、初めて飲酒した時と似ていた。内向的な性格が変わり、世界が違って見えた。やはり羞恥心や自制心が薄れ、言葉が降りてきて、何でも淀みなく話せたし、話の筋も通っていると確信していた。退院後も快進撃が続き?以前と違い、三倍の速度でお喋りを続けた。不遜にも眠れる能力が開花したのではないかとさえ思った。三倍速で考え、話せば、これまでの三分の一の時間で用が足せ、あれもこれも出来るような気になった。お相手をしていただい た方々には、多大の迷惑をかけ、申し訳なかったと思う。妻を始め周囲の人達は、異常なPASSIONを怪しみ、動向を見守っていたようだ。確かに薬の影響で、Highの状態になっていたのであろう。やがて、酔いが覚めたかのように、急激に元の状態に戻った。その転変を迎え、自分の好きな言葉「得意端然 失意泰然」を意識することなく、現実に引き戻された。

以来、今更ジタバタしてもしょうがないし、より、ものをじっくり考えられるようになった。丁寧に過ごすようになったお陰で、一日が意外と長く、時を刻んでいる実感もある。たまに不整脈が起こったり、脹ら脛がつったりするが、概ね健康だと思っている。12月に78歳になるが、あせって、優先順位等は考えないことにする。昔から、切迫したものしか、こなせない悪癖もあった。これまでとそんなに変わらないが、岐路から完全に脱し,ゆるやかな真っ直ぐな道をトボトボと歩いて行くことになる。未だ日々是好日の心境には、ほど遠いが、ありがたいことだ。

この記事を書いた人
伊藤武

斎藤清の出生地、会津で斎藤清版画ギャラリー「イトー美術」を運営している、いとたけ こと伊藤武です。
http://itobi.sakura.ne.jp/

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